忘れてはならないこと④入院~子宮外妊娠発覚~退院まで [赤ちゃん]
まだ8月21日
入院が決定し、私は病室へ連れて行かれベッドの上でポツンと旦那さんが入院セットを持ってくるのを待っていた。その間も看護婦さんが、しきりにお腹は痛くないか聞いてきていた。20時近くになって旦那さんが荷物を持ってやってくる。そして、それと同時に先生がやってきて私たちの前に書類出した。
『もしかしたら手術することになるかもしれないからその同意書と、子宮外妊娠だった場合は血が足りなくなる可能性があるから、輸血してもいいという同意書にサインをして下さい。』
え、輸血?そんなに大変な手術なの???
ここで初めて私は手術の重大さを知る。更に先生はサラッとこんなことも言った。
『もしかして赤ちゃんが卵巣の近くに居た場合、卵巣が破裂する可能性があるから、卵巣も取ってしまうかもしれないから』
卵巣がなくなったら・・・赤ちゃん産めないでしょ?
思った言葉は怖くて口には出せなかった。ただ、黙々と同意書にサインをした。同意書を書き終わり、先生は言った。
『ただsashiさんの場合、状態が安定しているから多分緊急手術になるということはないでしょう。さっきも言った通りまだ子宮外妊娠と決まったわけではないので、明日の採血の結果が出るまで待ってもらうことになると思います。ただし、夜中緊急にお腹が痛くなった場合は手術ということになるのでよろしくお願いしますね。』
そう言って先生は帰って行った。
旦那と別れ、その日の夜、不安で眠れなかった。でも、お腹が痛くなるということはなかった。
8月22日
生理2日目くらいの出血が相変わらず続いていた。お腹はたまにシクシクと痛いけども、生理の時の方が痛い状態だった。
朝6時。起きがけに看護士さんがやってきて、採血をして行った。結果が出るのは、お昼過ぎになるという。
お昼前に看護士さんが、病室を救急センターの病室から婦人科の病室へベッドが空いたから移そうと思うんだけど・・・と言いにくそうにやってきた。私が不思議な顔をしていると、看護婦さんは『そこ、産科も一緒だから赤ちゃんがいるのよ。とりあえず移りたくなかったら移らなくていいから、まず雰囲気を見にいかない?』そう言われ、産科の病棟へ見学に行った。
産科の病棟は入った瞬間にミルクの匂いがした。お母さんの部屋だ、そう思った。トイレの正面の部屋にガラス張りにいる赤ちゃん達の姿・・・。もし、私が流産ということが決定になったら何て思うかな。全然想像がつかなかった。羨ましいって思うのだろうか。何で私だけって思うのだろうか。そんなの今の私が分かるはずがない。
看護士さんにどう?って聞かれても、私は答えることができなかった。とりあえず病室の移動は保留になった。
14時過ぎ、仙台から姉が母と一緒に駆けつけてくれた。私が元気そう(?)なので顔を見て安心したようだ。この日、高校野球の決勝があって、ずっと見ていた。佐賀北高校、実力的には広陵の方が上だろうけど勝ってくれないかな。そう思っていたら、マンガみたいな勝ち方をした。本当に嬉しかったし元気が出た。手術も怖くないって思えた。
そんな時、先生がやってきた。この時の私は、手術の覚悟はできた。さぁ来い、という感じで先生を見ていたと思う。
『ホルモンの値が2000を超えていました。この数値の場合、子宮内に赤ちゃんの姿が見えないと言うことは、正常な妊娠ではないということを示します。なので子宮外妊娠か流産という事になります。』
やっぱりそうだったか。不思議と悲しみはなかった。
『ただ、子宮外妊娠というと、普通は我慢できないほどお腹が痛いことが多いんですよ。だから、問答無用で手術をしてしまうんですけども、sashiさんの場合状態が安定しているので、明日また採血をして、ホルモンの値が上がっている様だったら手術という方向で行きたいと思います。緊急に痛くなった場合は別ですが。』
手術はまた明日へ持ち越された。
先生の話が終わると、姉が明日は仕事があるからと仙台へ帰って行った。母は神奈川の私の家に泊まることになった。本当にありがたかった。
その夜少しだけ泣いた。
8月23日
出血の量は相変わらずの生理二日目。お腹の痛みはあまり無し。
朝、採血を看護士さんがしていった。今日手術かもしれない…。でも麻酔ですぐ終わっちゃうだろうし、いいや。そう考えていた。深く考えるのはやめよう。そう思った。
10時くらいに先生が病室に来た。話があるからと、個室に呼ばれた。やっぱり手術かな?
『貧血の数値は上がっていたけど、ホルモンの数値は下がっていたよ。まだ、2000以上あるけどね。』
先生はこう切り出した。
『相談なんだけどね、今回は数値が高いから、間違いなく子宮外妊娠ということになると思うんだけど、もしかしたらお腹の中で赤ちゃんが育つ前に流産してしまって自然流産の形になるかもしれないんだ。』
ふむふむ。
『子宮外妊娠の場合、手術をして、お腹の血を取り除けば1週間後に退院できる。でも、sashiさんの場合、状態が安定しているからこのままホルモンの数値がある程度まで下がれば手術をしなくていいかもしれない。ただしその場合、長い間出血は続くと思うし、僕もいつ退院させてあげられるか予想がつかないんだけども、どっちがいいかな?』
手術はしたくありません。私はそう言った。
この時、私が手術するって選択を選んでいたら・・・多分一生忘れられない傷を負う事になったかもしれない。今になってそう思う。
ここで私は思っていた疑問を全て口にした。前の病院で卵巣嚢腫と言われたこと、何で出血しているのかということ、その他色々。先生は一つ一つ丁寧に答えてくれた。卵巣嚢腫はなくなっていたそうだ。手術しないという事になって本当に良かった。
その日の午後、義母が群馬からわざわざ見舞いに来てくれた。義母に一部始終あったことを話す。義母は静かに私の話を聞いてくれて、最後ににっこり笑ってこう言った。
『お腹の子は本当に親孝行の良い子だったのよ。また還ってきてくれるわ』
言葉は過去形だったし、昨日まで認めたくないって思っていたんだけど、義母がそう言ってくれた時、素直にその言葉が私の中に染み込んだ。お義母さん、ありがとう。
※義母は家に帰った後、神社へお参りに行ってくれたそうだ。そこでカエルのお守りを買って、家に祀ってくれたらしい。本当にそういう心遣いには感謝しても足りない。
8月24~30日
少量の出血がずっと続く。お腹の痛みは特になし。
入院しているとすることがない。本当に暇なのでDSと読書を交互にやっていた。この間に血液検査を2回、超音波を1回やった。数値は緩やかに下がってきているみたい。子宮の中は、まだ血がたまってはいるけども、最初に来たときに見せられた写真よりは良くなっていた。
この間に救急センターの病棟から、病院側の好意で普通内科の病棟へ病室が移った。
8月31日
採血の結果、ホルモンの値が市販の薬の妊娠反応を示す値1000を切った。なので、一応退院。これからは正常な値に戻るまで週に1回病院へ通院することになる。家に帰ってから自分の病状をインターネットで調べてみてとても危険な立場におかれていたということに気が付き、真っ青になる(苦笑)
⑤へ続く。多分⑤で最後。
sashiさん はじめまして
私も去年の5月に子宮外妊娠で入院しました
私の場合はちょっぴりの出血が続くものの子宮内に胎のうらしきものが
見えて最初は正常妊娠だと思われていました
しかし出血と腹痛が続き流産と思い診察を受けたら
子宮外妊娠の診断で翌日には開腹手術で片方の卵管を切除しました
私の場合は手術をせざるをえず、後悔もありませんでしたが
次の妊娠がまた子宮外妊娠だったらどうしようという恐怖感はありましたが、無事子宮に着床して現在妊娠中です
子宮外妊娠の情報ってホント少ないですよね
私も自分の子宮外のことをいつかブログで書きたいなと思っています
初めてのコメントなのに長文ですみませんでした
今は無理せずお体をいたわってくださいね
by トリ子 (2007-09-01 23:04)
トリ子さんコメントありがとうございます。
実際に経験をして、本当になんとも言えない気持ちになりました・・・。子宮外妊娠は情報も少ないし、調べたら怖いことしか書いていないし。これから不安という気持ちももちろんあります。私の場合は数々の巡りあわせと、良い先生に出会えたということで今回のような結果になりました。まずは、そのことに感謝をしたいと思います。
妊娠おめでとうございます!本当よかったですね。退院後、病状について調べてみて、子宮外妊娠をした人は次の子供もそうなる可能性が高いというのを見て、正直ビクビクしています。
でも、私も前向きに頑張っていきたいと思います^^。コメントありがとうございました。
by sashi (2007-09-01 23:49)
sashi大変だったね…
初めての妊娠だったのに本当に。
実は長女が産まれる前の第1子は流産をしました。子宮外とかではなく、三ヶ月まで育って、お腹の中で死んでしまい、自然流産でした。
特に大きな痛みはなく、出血があり病院へ行くと、エコーでも映らなくなり、流産…でした。
ブログの中で、「8/22 その夜少しだけ泣いた」で、流産が確定して、家のドアを開けたら妻が泣いていたのを思い出した。
体へのダメージは、想像もつきませんが、sashiの気持ちが男が分かる範囲では、少し分かるような気がする。
義母さん「また戻ってきてくれる」それと笑顔。素敵じゃないですか。
こんな時に、笑って励ましてくれるなんて、身内しかできません。それも、義母さんができるなんて!うらやましいです。
またいつか、よい報告がブログの載ることを期待しています。
by tomesan (2007-09-02 08:08)
ありがと。
私も他の人が経験した気持ちなんて分からない。ただ、義母に言われた一言で全部納得をしてしまって最後には感謝という気持ちが残りました。
私の姉が三人の子供生んだ時は、時間なんてあっという間に過ぎていった。でも、私の場合早く分かりすぎていたってこともあるかもしれないけど、1ヶ月近い時間が遠く長く感じました。
本当、親になるって大変なことなんだってしみじみと思いました。
私もトメ吉の所の赤ちゃんが無事に生まれてくるということ、本当に心から祈っています。
by sashi (2007-09-02 08:57)
退院おめでとう!普通に妊娠・出産したのでいいアドバイスできなくてすまない。私の場合、妊娠中はすっごく感情の起伏激しかったのでムカッときたり泣きたくなったら我慢しないんだよ。旦那さんに話したり、誰かに聞いてもらうといいよ。いつでもメール待ってるゼイ!21時過ぎには寝ちゃうけど・・・
by ビリービール (2007-09-14 09:55)
ビリー!!!ありがとう。
入院中は本当に色々愚痴聞いてもらって、励まされたよ。
返事遅くなってごめんよ。
いつも君からメールをもらって元気になってるよ。
また、今度皆でわいわい会えるといいね。台風じゃない時に・・・
by sashi (2007-09-21 08:09)